人生の8年間をAzPainter2と共に歩んだ。
・はじまりの激重パソコン
親のお下がりで動作が激重いパソコンを貰った。Windows Vista。
幼い頃はおばあちゃんの家でWindows備え付けのペイントツールを使ってマウスで絵を描いたり、小学生向けの学習ソフトに入っているおえかきツールで絵を描いたりしていたが、自分専用のパソコンを手に入れたことをきっかけに、私は本格的にデジタルで絵を描いてみたいと思うようになった。
中学生の私はクリスマスプレゼントにワコムのペンタブレットを買ってもらい、イラストソフトの吟味を始めた。
その激重いパソコンは激重く、ペンタブレット付属のペイントソフトはどれもまともに動かなかった。
「ペイントソフト 軽い」で検索をかけること数日。
当時のペイントソフトで最も動作が軽いとされていたのが「AzPainter2」だった。
それまでに試したソフトは、どれもサッと一筆置くだけで動作を停止するような、とても絵なんか描けるレベルではなかったのだが、AzPainter2だけは私のお下がり激重パソコンでも軽やかに動作してくれた。
…のだが、カーソルが表示されないのだ。
筆跡は見えるが、描画していない時、キャンバス上でペン先がどこにあるのかが表示されない。
デスクトップで例えるならば、クリックするまでカーソルがどこにあるのか分からない状態だ。
そんな状態なので精密な線画を描くのは難しく、当時はコピー用紙にシャープペンシルで線画を描き、パソコンに取り込んでAzPainter2で着彩を行っていた。
・2台目お下がりパソコン
数年経ち、私は2台目のお下がりパソコンを貰った。またVistaだった。
2台目のパソコンは比較的であるが軽く、AzPainter2のカーソルも見えるようになった。
だが、やはりAzPainter2以外のソフトはまともに動かない。
カーソルが見えるようになったので、その頃から線画もデジタルで行うようになった。
AzPainter2は無料でありながら、その機能の多さ、便利さ、描きやすさは有料ソフトにひけをとらない程であった(と思う)。
効果レイヤーの種類も十分にあり、ドット模様やボーダーを簡単に作成できたり、明度を透明度に変換する機能はシャープペンシルの線画を取り込む際に大いにお世話になったし、縁取り機能なんかは有料ソフトよりも使いやすかった。
何より、他のソフトにはない独特な混色の水彩筆がお気に入りだった。
・自分で買った新品パソコン
働ける年齢になった私は、バイト代で新品のパソコンを買った。windows10だ。
そのパソコンはクリスタもSAIも動いたし、メディバンペイントも動いた。
でも私はAzPainter2を使い続けた。
ペイントソフトの乗り換えは億劫だし、何よりもAzPainter2が気に入っていたからだ。
色々な絵を描いていくなかで、AzPainter2では対応できないこともあった。
まず単純に不便な点として、AzPainter2には投げ縄ツール(フリーハンドで切り取る範囲を選択できる機能)がない。
選択機能では四角の形にしか選択できなかった。
どこか一部を選択したい時には、まず四角に切り取り、いらない部分を消しゴムで消す、という作業が必要だった。
これは私がAzPainter2を使っていて一番不便に感じていた点である。
もう1点、これはどうにもならないのだが、AzPainter2で作成できるキャンバスは4500×4500ピクセルまでだった。
同人原稿など、ある程度の大きさに印刷する絵はAzPainter2では描けなかったので、そういう時にはメディバンペイントを使うこともあった。
・AzPainter2との別れ、iPad購入
日々の生活の中で気力が落ち、「絵は描きたいけど、パソコンに向かうまでのハードルが高い」という状態が続く時期があった。
iPadならキャンバスにたどり着くまでのハードルが低いのではないかと考え、私はiPad購入に至る。
AzPainter2はiPadに対応していない。
AzPainter2が忘れられない私は、AzPainter2に近い、シンプルなUIのアプリを求めた末に、Procreateというペイントアプリの導入を決めた。
ProcreateはiPad対応のペイントアプリとしては比較的安価で、PCソフトをiPad向けに調整したアプリが多い中、1からiPad向けに開発されており、直感的かつシンプルに操作できるのが特徴だ。
iPadに慣れないうちは、しっかり描きたい絵などにはAzPainter2を使うこともあったが、Procreateにも次第に慣れていき、私はAzPainter2を使わなくなっていった。
ペンタブレットもUSBポートから外れ、棚の隅に立て掛けられた。
始めの頃は、あのAzPainter2の独特な水彩筆をProcreateで再現しようと筆設定をこねくり回したりもしたが、どうしても混色が再現できず、インターネットで配布されている筆の中にも似た筆はなかった。
再現を諦め、Procreateに慣れることに専念するようになり、講座記事を見ながら気まぐれに作った筆でやっと再現できた頃には、もうあの独特のタッチは使いこなせなくなっていた。
私とAzPainter2との思い出はこれでおしまいだ。
今でもパソコンで画像をちょっと調整する時にはAzPainter2を開くが、その程度。
でも、使わなくなっても、今でも大好きなペイントソフトだ。
ありがとう、AzPainter2。
AzPainter2
https://hp.vector.co.jp/authors/VA033749/soft/azpainter2.html